鳥刺しは、好きな人にとっては郷土料理であり、ごちそうでもあります。
一方で、**「鶏肉の生食は危ないのに、なぜ禁止にならないの?」**と疑問に思う人も多いですよね。
結論からいうと、日本では現時点で、鳥刺しを全国一律に禁止する明文の規制はありません。
厚生労働省は、鶏肉の生食や加熱不十分な鶏肉料理によるカンピロバクター食中毒が多発しているとして、生や十分に加熱されていない鶏肉を食べないよう強く注意喚起していますが、牛の生食用食肉のような全国一律の規格基準は鶏肉には設定されていません。
つまり、「危険だから推奨されない」ことと、「法律で全面禁止されている」ことは別、というのが今の実態です。
鳥刺しが禁止にならない一番の理由
いちばん大きいのは、鶏肉の生食について、国が牛肉のような一律の法規制をまだ設けていないからです。
厚生労働省と消費者庁は、2011年から生食用の牛肉について規格基準と表示基準を設け、違反すれば行政処分や罰則の対象になる仕組みにしましたが、この仕組みは牛肉向けです。
一方、鶏肉については、厚生労働省が「十分に加熱して提供しましょう」と事業者向けに呼びかけ、消費者にも生食を避けるよう案内しているものの、鳥刺しそのものを全国で一律に禁止する規格基準までは作られていません。
それなら危なくないということ?
まったくそうではありません。
厚生労働省は、健康な鶏でも腸管内などにカンピロバクターやサルモネラを保有している場合があり、現在の食鳥処理技術ではこれらを100%除去することは困難だとしています。だからこそ、食中毒予防の観点からは、生や加熱不十分な鶏肉を食べないことが最も効果的だと案内しています。
食品安全委員会も、鶏肉の生食や加熱不十分な喫食が大きな問題だと説明しており、2009年の評価書では、鶏肉を生で食べる人のほうが1食あたりの感染確率が高いと示しています。
つまり、禁止されていない=安全ではありません。
では、なぜ国は一律禁止にしていないの?
理由はひとつではありませんが、主に次のように考えられます。
郷土料理としての歴史があるから
鹿児島県や宮崎県では、鳥刺しや鶏たたきは地域の食文化として長く定着しています。
そのため、全国一律にただちに禁止するのではなく、地域では独自の衛生基準を設けて管理してきた経緯があります。鹿児島県は**「生食用食鳥肉の衛生基準」**を策定し、加工、保存、運搬、表示などの目標基準を定めています。宮崎県側にも同様の生食用食鳥肉の衛生対策資料があります。
国の制度が「禁止」より「注意喚起」中心だから
現状の国の対応は、鶏肉の生食を認めて積極推奨しているわけではなく、むしろ食べないようにという注意喚起が中心です。
ただし、牛肉のように明確な生食用規格基準を作って全国一律に取り締まる形にはしていません。
鶏肉には「公的な生食用認証」が全国統一で存在しないから
牛肉には生食用規格基準がありますが、鶏肉には同じような全国統一の公的基準がありません。
そのため、現場では「生食用」として扱う地域や事業者があっても、それは牛肉のような全国共通制度に裏打ちされたものではなく、地域基準や自主基準に依存する面があります。
鹿児島や宮崎の鳥刺しは安全なの?
ここは誤解しやすいですが、リスクを下げるための独自基準はあります。
鹿児島県の基準では、糞便系大腸菌群、サルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌が陰性であることを成分規格目標にし、温度管理や表示基準も定めています。
ただし、これはリスクをゼロにする保証ではありません。
厚生労働省は、鶏肉や内臓からカンピロバクターが高頻度で検出されるとし、生や加熱不十分な鶏肉を避けるよう案内しています。国のメッセージとしては、地域文化の有無とは別に、生食は避けるのが基本です。
牛のユッケは厳しく規制されたのに、鳥刺しはなぜ同じにならない?
牛肉は、2011年の集団食中毒事件を受けて、生食用食肉の規格基準と表示基準が法的に整備されました。
厚生労働省の資料では、生食用の牛肉は表面から1cm以上を60℃で2分以上加熱殺菌するなどの基準が定められ、違反すれば行政処分や罰則の対象になります。
一方、鶏肉は現時点でそこまでの全国一律規制にはなっていません。
つまり、牛肉は法的に細かく制度化されたが、鶏肉は主に注意喚起と一部地域基準で運用されているという差があります。
鳥刺しは今後禁止になる可能性はある?
可能性をゼロとは言えませんが、現時点で全国一律禁止が決まっているわけではありません。
ただ、厚生労働省や食品安全委員会は一貫して生や加熱不十分な鶏肉を避けるよう呼びかけています。実際の制度改正は、食中毒の発生状況や社会的な議論次第で変わる可能性があります。
まとめ
鳥刺しが禁止にならないのは、現時点で鶏肉の生食を全国一律に禁止する明文規制がないからです。
牛肉の生食用食肉のような法的な規格基準は鶏肉にはなく、国の対応は主に**「十分に加熱して食べるように」という注意喚起**が中心です。
ただし、禁止されていないから安全という意味ではありません。
厚生労働省は、現在の食鳥処理技術では食中毒菌を100%除去するのは困難としており、生や加熱不十分な鶏肉を避けるよう明確に案内しています。
鹿児島や宮崎には独自の衛生基準がありますが、それでも国の基本姿勢は**「鶏肉は十分加熱」です。
このテーマは、法律上の扱いと実際の安全性**を分けて考えるのが大事です。